瑠哀 ~フランスにて~
 焦げ臭い、なにか焼け焦げたような匂いが鼻を突く。

 自分の上に伸し掛かるケインの体が、動かない。


「……な、に……?」

「まったく、何をしている。

外道がっ。

お前のせいで何もかもがオジャンになったと言うのに、いつまでも僕の足を引っ張るな」


 感情など微塵に感じられない冷酷な声音が、淡々と無情に言い捨てた。

 ガバッと、伸し掛かっている重みが一気に消え去り、

視界が開けた視線上に、リチャードが銃を片手にケインを撃ち殺したその瞳を冷淡に輝かせ、

瑠哀を見下ろしていた。



「立て。これ以上、僕を怒らせるなよ」



 チラッと、横に目を向けると、ケインが床に倒れ込んでいる。

 さっきまでの獰猛な勢いも失せ、今は息切れたように全く動くことはなかった。


 ピクピク、と半分開いたままの瞼が激しく痙攣していた。


「立て。何度も言わせるな」


 瑠哀に突きつけている銃口が震えてもいない。

 今、ここでケインを撃ち殺したばかりだと言うのに、その目には全くの恐怖など映っていなかった。


「…なぜ、殺したの…?」

「ふん。こんな能無しなど、生きてる価値はない」

「殺す、なんて…――」


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