瑠哀 ~フランスにて~
「自分が襲われてても、情を示すか?

それは、それは。

だが、僕にはそんなものなど興味はないね。

同情?この男にか?

――ふん、こんな愚鈍、金づるがなければ生きていても何の価値もない。

死んで当然だな。

僕の邪魔だけをした、大馬鹿者だ」

「なにを―――」

「さっさと立て。

それとも、こいつと同じようになりたいのか?」



 もう一度、銃を突きつけられて、瑠哀は仕方なくヨロヨロと立ち上がった。



「まったく、手間をかけさせてくれる」

「…誤算は、誤算…でしょう?」

「うるさいっ」


 指摘されて、キッと、リチャードが瑠哀を睨め付ける。

カッと、切れかかるような雰囲気なのに、

その目が凍り付くほどに冷淡な色だけが浮かんでいた。


「動けっ。いつまでもここにいると、足がつく」

「…逃げられるはずはないわ」

「ふん。いつまで負け惜しみを言ってるんだ。自分の立場をわきまえるんだな」


 ドン、と無理矢理押され、瑠哀が一歩動き出した。
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