瑠哀 ~フランスにて~

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「ルイ、夕食を一緒にしたいが、これから人に会わなければならないんだ」

「気にしないでください。私もそろそろ帰らなければならないから」


 ピエールは片眉を上げて、


「ルイ、その他人行儀みたいな言葉遣いは好きじゃない。

僕は君に敬語を使われるほど、年をとっているとは思ってないんだ」

「…次からは、気をつけるわ」


 瑠哀は肩をすくめてみせた。そうして、テーブルの上のバッグに手を伸ばしながら、


「あまり遅くなるといけないから、もうそろそろ帰らなきゃ」

「じゃあ、俺が宿まで送って行こう」


 椅子から立ち上がった瑠哀を見て、朔也は壁から身を起こすようにした。


「そんな、わざわざ気にしないで。

外もまだ明るいし、私の泊っているモーテルは、街に近いの」

「それでも、もう夜だから」

「ルイ、遠慮することはないよ。サーヤは暇だから」

「それは、ひどいな」

「でも、特別の用はないんだろう?

―――ルイ、明日の朝、目が覚めたらここにおいで。

朝食を一緒にしよう。その後、好きなところに連れて行ってあげるよ」



 随分と気に入られたものだが、瑠哀はなんだかそこまでしてもらうのに、微かな罪悪感があった。


「ありがとう。

でも、いつ起きるか判らないから、私を待っていないで欲しいの。

昼前には顔を出すわ」


「君は謙虚だね。

一ヶ月しかいないんだから、楽しむべきだよ。

君を待ってるからね」



 なにか抵抗し難いものを感じて、瑠哀は、うん、とためらいがちに頷いた。



「じゃあ、行こうか」



 瑠哀は朔也と一緒にピエールのギャラリーを後にし、モーテルへと歩き出す。
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