瑠哀 ~フランスにて~
『ピエールは、かなり君を気に入ったようだね。

ここまで彼が他人に興味を示すのは、すごい珍しいんだ』

『そうなの?』

『うん。それに、よく怒り出さずに、あそこに留まっていられたね』

『腹は立ったけれど、元々、あの本心を見たくて、私もピエールをけしかけたから。

どう出てくるか、少し興味があったの。

彼は、おもしろいわ』

『おもしろい?!』

『こんな言い方しちゃいけないんだろうけど、おかしいとか、そういうんじゃないの。

ただ、もっと彼を観たくなるの。

深く探って行きたくなる、って言う感じなんだけれど………』


 瑠哀は朔也を見上げ、


『やっぱり、私って変かしら?』


 朔也は思わず失笑した。


『観たく……ね。

―――それは、すごい。

君は確かに、彼の周りにいる女性とは違うようだ。

ピエールを、おもしろい、と言ったのは、君が初めてだよ』

『よく言われるわ。変だ、ってね。

自覚はしているんだけれど、たまに、抑えがきかないの』


 朔也はくすくすと笑いながら、瑠哀を覗き込むようにした。


『変だ、とは言ってないよ。

他とは違う、と言っただけ。

あのピエールに臆しもせず、真っ直ぐにものを言える君はすごいと思う。

だから、その違いがとても魅力的なんだ、と言っているんだよ』

『…それって、褒められてるのかしら?』

『そうだよ』
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