瑠哀 ~フランスにて~
「ルイ、俺も君と旅行するのは楽しみだよ。

俺のことを心配してくれているみたいだけれど、そんなこと全然気にする必要なんてないんだよ。

ピエールも、俺も、君と一緒にいるのが楽しいから」


 この優しい微笑みがどうも無理を言ってしまったようで、瑠哀は溜め息がちに、ごめんね、と呟いた。


「ルイ、謝るのは良くないな。

僕達が君に無理強いさせているみたいだ」

「ピエールの言ってることは、気にしなくていいよ、ルイ。

君の反応を見て、楽しんでいるだけだから」


 軽口を叩き合っている二人を眺めながら、瑠哀は静かに微笑みをみせていた。


「なに?」

「ピエールが以前に言ったことって、全部が全部、本当じゃないわね。

ピエールには、サクヤがいるもの。

お金や才能に興味を示さないんでしょう?

人を人として認め、その個人を尊重できる人だもの、ね。

だから、ピエールがサクヤと一緒にいる時、とても穏やかで落ち着いた表情になるんだわ。

お互いに信頼しあって、大切にしてる。

そういうのって、いいね」


 瑠哀は目の前に広がる噴水の中を覗き込むようにした。


 後ろで立ち尽くしている二人は、顔を見合わせる。


 こほ、っと朔也は軽く咳払いをして、


「―――ああ、真顔で言われると、照れるな……」

「確かに、ね……」
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