瑠哀 ~フランスにて~

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「やっぱり、南の方は暖かいのね」


 瑠哀は渇いた風を頬に受けながら、辺りの風景を見渡した。

 パリとはまた違った雰囲気があり、近くで海の香りがする。



 パリから、ここニースまで飛行機で来た。

 こんな数時間の旅で南に来る予定ではなかったが、昨日、あの話を終えた後、ピエールがニースに別荘を持っている、と言うので、ここに来ることになった。



「色々廻りたいなら、ニースでも構わないだろう?

モナコも、イタリアも近いから、好きなところに行けるよ」


と、ピエールは言う。



 イタリアまで足を伸ばすつもりは無かったので、瑠哀は少々面食らった。

 どうやら、瑠哀の色々廻りたい、と、ピエールの色々廻る――が少しずれているようだった。



「―――ねえ、これがピエールの別荘?」


 空港から来るまで連れてこられた家を見て、思わず疑ってしまいたくなった。



 ピエールは、そうだよ、と答える。

 大きな扉の前に車が寄せられ、その扉から誰かが出てきた。



「よくお越し下さいました、ピエール様。

お部屋の用意は整えてあります」


 ピエールはそれに頷く。


「僕宛の電話は一切受け付けないでくれ。

用があるなら、オフィスの方に連絡するように」

「かしこまりました」



 ピエールは、その年の行った男性に何かを言いつけながら、中に入って行った。

 車を運転してくれた男が荷物をおろしてくれる。



 瑠哀は荷物が全部下ろされるのを待っている間、辺りを見渡すようにした。


『……これって、どう見ても、別荘じゃなくてお屋敷よね』
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