瑠哀 ~フランスにて~
「それは、大変だったね。

ユージン、ルイがいつも助けてくれるって、そんなにいつも会っていたの?

ルイだってパリに来たばかりで、そんなにユージンと会う暇は無かっただろう?」



 瑠哀と初めて会った時、瑠哀はパリに来て三日目だと言っていた。

 その後は、ほとんど一緒にいたから、ユージンと会う機会はなかったはずだ。



「パリであったのは、1かいきりだよ。

ルーイがパリについた日、ルーイがたすけてくれたんだ。

そのよる、ルーイのへやにとまって―――」

「ちょっと待って、ユージン。

ルイが最初にパリに来た日、ルイがユージンを助けた?」

「うん。ママンのしごとがおわって、いえにかえろうとしたら、

へんなやつがママンをつかまえて、ぼくも、つれていかれそうになったんだ。

たすけて!―――っていったら、ルーイがスーツケースをなげて、

あいつらにあてたんだ。

カッコイイでしょう?」

「その、変な奴らって、今でもユージンの後を尾けているの?」

「わかんない。

あれから、あってないもん。

それが、どうかした?」



 ユージンは少し口を尖らせて、膨れた顔をする。

 朔也はもう一度笑って、ユージンの頭を撫でた。



「いいや、何でもないよ。

それより、ユージン。あっちに熱帯魚を飼っている大きな水槽があるから、

行って、見てきてごらん」
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