瑠哀 ~フランスにて~
 そうしているうちに、二週間ほど前、セシルは自分達が尾けられているのではないか、と疑い出した。
 それだけではなく、変なことが相次いで起こって、その疑惑は更に深まった。


 瑠哀は、初めその話を聞いた時、そのマーグリス氏がユージンを手に入れたがって、彼を連れ去ろうとしたのかと思っていた。


 だが、あの男達の様相はもっと怪しい感じがして、切羽詰った男が瑠哀を会談から突き落とした時と言い、あの声の冷酷さと言い、単にユージンを誘拐したいだけではない、と言う小さな疑念があった。




「―――ルイ、何を考えているの?」


 バルコニーに寄りかかりながら、首だけを後ろに回すようにした。

 ピエールと朔也が微笑みながら、瑠哀の側に寄って来た。



「月がきれいだなぁ、って」

「ああ、もうすぐ満月だ」



 夜の海は波音さえ聞こえないくらい、穏やかで静かだった。

 海の上に浮かぶ月が、その形を残して反射している。



「ごめんね、二人とも。

変なことになってしまって。せっかくの休みなのに、

なんだか、私の監視で終わっているみたいだもの」

「それは、ルイのせいじゃないだろう。

それに、俺は今でも十分に楽しんでいるしね」


 瑠哀はピエールに目を向ける。


「僕は気にしてないよ。ルイが楽しいなら、それでいい」

「ピエールは君といることに満足してるから、他の些細なことは気にしないよ」


 朔也が小さく耳打ちした。瑠哀は、くすっ、と笑う。

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