瑠哀 ~フランスにて~
『―――どうしたの?』


 セシルが朔也に支えられるようにして、床に座り込んでいる。



 ピエールが長い箱を瑠哀の前に出すようにした。

 その中には、矢で射られて死んでいる鳥が入っていた。

 その横に小さなカードがあり、何かが書かれている。



“これ以上近づくな。余計な真似は、破滅の元。次にこの鳥になるのは誰か?”



「ここに送られてきたんだ。さっきね」


 瑠哀はその箱から目線を外して蓋を閉めた。



 ここの居場所も知っている。昨日の、今日で。

 こんなにもあきらかに攻撃して来ている。―――そこまで事態が切迫していたとは……。



「セシル、大丈夫よ。これは、脅しだわ。ここでは、彼らは何もできない」

「……どう、して、そんなことが言えるの?」

「昨日のような騒ぎを起こすには、それなりの計画と時間が必要なの。

昨日、あれだけの騒ぎを起こした彼らが、

今すぐ何かできるほどの時間はないわ。

だから、これは脅しだわ」

「でも……、私たちの居場所を知って…いるんですよ」

「わかってる。―――でも、ピエールのは家は警備がきちんとされているから、

誰かが侵入したら、必ず判る。

だから、もう部屋に戻って、休んで?部屋にあなたがいなかったら、

ユージンが心配してしまうから」

「………そう、ですね…」



 セシルは朔也に支えられて起き上がる。

 その顔には、疲労困憊の様子が隠し切れなかった。



 ガードマンの一人がやって来て、セシルに付き添い部屋に向かう。
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