森の人
「何もないよ…。ごめん、俺、どうかしてるよな?」

爽やかな表情、普段の口調。
平静を装っている拓也。

しかし、澤山に握られている手は、微かに震えていた。

その振動は、澤山の手を伝い、澤山の胸の中に入っていく。

まるで拓也の心の中が入ってきたような気がした澤山。
拓也との距離を、近くに感じた。

「拓也。あのさ…」

そう言いかけた時、

ガラガラ

「大丈夫?拓也」

拓也の事を聞き付けた茜が、血相を変えて入って来た。

慌てて拓也の手を離す澤山。

「じゃあ、僕はもう行くよ」

そう言うと、戸の方へ向かった。

「茂君、ありがとね。拓也を介抱してくれて」

「うん」

茜を見て笑顔で返事をする澤山。
すぐに振り返り、保健室を出た。


独り歩く廊下。

そこから見える中庭には、色鮮やかな花はなく、枯れて茶色くしおれた向日葵が、土に還ろうとしていた。


『拓也…』

拓也の手を握っていた手を見つめる澤山。

『僕は…』
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