森の人
「それに…」

そう言って拓也の胸から離れる澤山。

「拓也には、茜さんがいるじゃないか」

懸命の笑顔を拓也に向けた。

「そうだな」

澤山の胸が、チクッと痛む。

「卒業しても、仲良し三人組は永遠に不滅だよ」

笑顔を崩さない澤山。

「おう。茂との友情もな」

「うん」

笑顔が影る澤山。

別の言葉を、展開を、心の奥底では期待していた。



「こんな所にいたんだ」

元の、木枯らし吹き抜ける中庭のベンチに戻った、二人の空間。

その背後から、茜の声がした。

「風邪ひくわよ」

そう言って茜は、澤山と拓也の間に、割り込むように座った。

「こんなに冷えて。校舎の中入ろうよ」

拓也の体を摩りながら、拓也の腕を持ち、立ち上がった。

「さっ、茂君も」

そして、振り返り、澤山の顔を見て言う茜。

「…」

一瞬、硬直する澤山。

茜のその表情は、普段とは何ら変わりはないように見えた。

しかし、澤山には、その視線が、氷のように冷たく鋭いものに感じ、澤山の全身を突き刺した。

「…」


『木枯らしのせい…』


澤山は、そう言い聞かせると、二人の後に続いた。
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