甘い毒

「…ユイ」


縋るような甘い声に一瞬心がグラッとする。



「わ、私…トイレ」





蛇口を捻って顔に水を浴びせ、洗面台の上に手をついた。


アラタは、彼氏であるシンの親友だった。


人懐こいシンとは違い、なにを考えているのかわからなかった。


少し影のある雰囲気に惹かれなかったといえば嘘になる。


彼の瞳に囚われて、一線を越えたのは一度だけ。


彼氏のシンが海外に留学すると決めたあの雨の日に――。

< 3 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop