極上御曹司のイジワルな溺愛
「椛、何飲む?」
明日はMCの仕事が入っている。お酒は強いほうだが、今日は一杯だけと決めていた。
「私はモヒートで」
「じゃあ俺は、ジントニック。あと、こいつ腹減ってるから、マスターのお任せで旨いの食わせてやって」
「了解」
マスターは慣れた手つきでカクテルを作ると、カウンターの奥へと消えていく。
「まずは、お疲れ」
蒼甫先輩が差し出したカクテルグラスに、大きな音をたてないように自分のグラスを傾けた。
「お疲れ様です」
モヒートを一口飲めば、ミントとライムの爽やかさが、喉と心をスッキリさせてくれる。
それにしても雅苑から車で十分と掛からないところに、こんな店があったなんて。
物で溢れている感があるのに、なぜか落ち着くのは、温かみのある色のランプに照らされているからだろう。
「薫さんと里桜さんも、来ればよかったのに」
お酒が入ったからか、本音がポロッと漏れる。
「まあな。でもお前、兄貴に肩抱かれて、満更でもない顔してなかったか?」
「はぁい?」
見当違いのことを言われて、思わずおかしな声が出てしまう。