極上御曹司のイジワルな溺愛
「そりゃ、結構なことじゃないか。で、こちらの女性は、紹介してくれないのか?」
マスターはそう言うと、私の方を向き柔らかい笑顔を向けてくれる。
「あ、すみません。挨拶が遅れました。里中椛と申します。雅苑でブライダルMCをしています」
「椛は学生の時の後輩で、今は部下」
後輩で部下……。
それ以上でも以下でもない──そう言われたようで、心がチクリと痛む。
そうだよね。私と蒼甫先輩の関係は、まだ何も変わっていない。変わったのは、私の蒼甫先輩への気持ちだけ。
そのことをバンッと突きつけられて、ガックリと肩を落とす。
一方通行の恋というものは、意外としんどい。
それでもせっかくこんな素敵なバーに連れてきてもらったんだから、暗い顔をしてるのは申し訳ない。蒼甫先輩は「飯はとにかく旨い」と言っていたし、まずは腹ごしらえ。
腹が減っては戦は出来ぬ──じゃないけれど、お腹が減っていては頭の回転も鈍るというものだ。