極上御曹司のイジワルな溺愛
泣き顔を見られた上に頬を触れられていてひどく恥ずかしいのに、彼の目にとらわれて身動きができなくなってしまう。
「それって嬉し涙?」
優しい笑顔で目に溜まった涙を掬う仕草に、いつもの少し高圧的な蒼甫先輩は微塵も感じない。だからなのか照れくささが勝ってしまい、目が曖昧に揺らいでしまう。
「ど、どうなんでしょうね」
そう言って「あはは……」と誤魔化すように笑って見せても、蒼甫先輩には何もかもお見通しのようだ。
「嬉しいなら嬉しいって、素直に言えばいいのに。椛はこんなときまで真面目だよなぁ。まあそこが良いところっていうか、可愛いんだけど」
ぽんっと頭を一度撫でると、また手が繋がれた。
「か、かわいい……」
そんなこと、初めて言われた。
どちらかといえば勝ち気な性格で、自分で言うのもあれだけど、“綺麗”と言われることはあっても“可愛い”なんて、覚えている限りないような気がする。
惚れた欲目──と聞いたことがあるが、こういう事を言うんだろうと、ひとりで納得してみたりして。