極上御曹司のイジワルな溺愛
「これでよし」
髪を乾かし終え整えると、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、部屋に戻るために階段を上がる。踊り場を曲がると部屋のドアに、もたれかかる蒼甫先輩が目に入る。
「蒼甫先輩、まだ寝てなかったんですか?」
時計を見れば丑三つ時を指している。至って普通の質問だ。
何も間違ったことは言ってないのに、蒼甫先輩は少し怒ったような顔を見せた。
「言ってる意味がわからん。お前は俺に、ひとりで寝ろっていうのか?」
「え? だって、寝るのはひとり?じゃないですか?」
目の前にいるこの人は、一体何を言っているのだろう。
当たり前のことを言っただけなのに呆れ顔で私を見る蒼甫先輩に、小首をかしげる。
「もう、ひとりじゃないだろう。恋人が同じ家で暮らしてるのに、別々で寝るほうが不自然じゃないか?」
「別々で寝るほうが不自然……ということは?」
「椛は今日から、俺の部屋で一緒に寝る」
「えぇ!?」
蒼甫先輩の発言に驚き、にっこりと微笑んでいる蒼甫先輩を見つめる。そんな私の手を優しく握るとスタスタと歩きだし、有無も言わさず蒼甫先輩の部屋へと入れられてしまった。