極上御曹司のイジワルな溺愛
「なんだよ怖かったって。俺は紳士だぞ。まさかケダモノだとか思ってたんじゃないだろうな」
今の私には似たようなものだ……というのは控えておこう。
「何もしなくて、これでは寝られないと思いますけど」
私の話を聞いてないのか、足も絡められて、これでは身動きひとつできない。抱き枕状態だ。でも蒼甫先輩は寝る準備に入ったのか体をもそもそ動かすと、私にピタリとくっついた。
「そうか? 俺はぐっすり寝れそうだ。椛も明日は忙しいんだし、早く寝ろよ。おやすみ」
「え? あ、はい。おやすみなさい」
反射的にそう言ったものの、果たしてこの状態で私は寝ることができるんだろうか。
背中に感じる蒼甫先輩の鼓動が、規則正しく動いているのがわかる。そのうちスースーと、小さな寝息が聞こえてくる。
「もう寝たんだ」
そう言えば、神戸に行っていたんだっけ。帰りも遅かったし、疲れていたんだろう。
胸の前に回されている蒼甫先輩の腕に、そっと触れてみる。優しく守られているようで、体の中心から幸せがこみ上げてくる。
今日は本当に、いろんな事がありすぎて疲れた。でもこうやって蒼甫先輩に身を任せていると、安心感からか眠気がやってきた。
蒼甫先輩、おやすみなさい──
もう一度、心の中でそう呟くと、ゆっくりと目を閉じた。