極上御曹司のイジワルな溺愛

「夜挙式の新郎って、安西さんところの息子だったよな?」

安西さんとは、雅苑に専属で入ってもらっているカメラマン。前撮りやロケーション撮影、当日のスナップ写真など、撮影全般を任せている写真館の代表だ。

雅苑の会長、蒼甫先輩の父親の矢嶌慶悟の幼馴染で、蒼甫先輩も子供のように可愛がってもらったと聞いている。

「そうですね。蒼甫先輩、お会いしたことは?」
「ない。打ち合わせも時間が合わなくてな。安西さんにもお祝いを言いたいし、披露宴には顔をだすよ」
「わかりました。お待ちしています」

仕事じゃ仕方ないと抱く腕を解いてもらい、助けてもらいながら立ち上がる。

「椛、そのスーツって」
「はい。この前、蒼甫先輩に選んでもらったスーツです。気づきましたか」

もっと早くに袖を通そうかと思っていたが、このタイミングになってしまった。

蒼甫先輩の目を細める視線にこっ恥ずかしさがあるものの、一応全身を見てもらおうとくるりと一回転して見せる。

「どうですか?」
「うん、やっぱり似合ってるな。さすがは俺だ」

ここでも言うか──と可笑しくなって微笑むと、偉そうに腕を組んだ蒼甫先輩も微笑む。

「なんだかんだ言っても、椛も女なんだな」
「なんですか、その『なんだかんだ』って。それに私は、生まれつき女です」
「わかってるよ、そんなこと。学生の頃はどうしようもないおてんば娘だと思っていたが、今では誰もが目を惹く女性になったなってこと。ちゃんと捕まえておかないと、誰かに獲られるんじゃないかと心配になる」

熱い瞳で語る蒼甫先輩に、驚きすぎて言葉が出ない。



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