極上御曹司のイジワルな溺愛
学生の頃から誰から見たって隙がなく、どんなことにも完璧で。私に対してはいつも傲慢、上から目線で物言う態度に何度ムカついたことか。
なんでも卒なくこなすから仕方ないけれど、自意識過剰で自信家で。でも誰からも愛され信頼されているのは努力の賜物……なんだろうけれど。
……って、私が何を言いたいかと言うと。
そんな人が「ちゃんと捕まえておかないと、誰かに獲られるんじゃないかと心配になる」なんて、どこかで頭でも打ったんじゃないか思ったわけで。と自信満々な瞳で言われても、なんだかピンとこないんですけど。
蒼甫先輩から聞く初めての弱気な言葉に、耳を疑ってしまった。
「せ、せんぱい? その心配、いらないと思うんですけど」
それなりに恋愛もしてきたが、一度も“モテた”という実感はない。なんとなく過ごしてきた私には要らぬ心配だ。
それなのに蒼甫先輩は、
「椛は自分をわかっていない。お前は綺麗だし、いい女だし」
「先輩ストップ! それ以上は言わないで。仕事に差し障ります。で、では、これにて……」
あぁ~「これにて」って何!? あんたは忍者?
心の中で自分にツッコみを入れ、蒼甫先輩を見たまま一歩二歩下がると、慌てて副社長室を出た。
「心臓に悪いんですけどぉ……」
副社長室から聞こえてくる大きな笑い声を聞きながら、激しく鼓動を打つ胸を押さえた。