極上御曹司のイジワルな溺愛

「返事は? まあ聞くまでもないけどな」
「ふふ、何それ。じゃあ聞かなくてもいい?」
「いや、やっぱり聞かせろ」

聞かせろって……。

こんな時まで傲慢な態度に、正直呆れてしまう。

でもそれが蒼甫で、そうでなくっちゃ蒼甫じゃない。

そして私の返事は……。

「私でよければ、よろしくおねがいします」

止まっていた涙が再び瞳に溜まりだし、まぶたを閉じると、それが一気に溢れ出す。

「俺が世界で一番幸せな女にしてやるからな、覚悟しておけよ」

耳元で甘く囁かれた言葉は、世界で一番恐ろしい言葉であって。

覚悟って、どんな覚悟なのよ!

と嬉し涙を流しながら、心の中で文句を言って。

でも蒼甫とはこんな関係が一番楽しいと思ってしまう私は、相当彼に毒されているらしい。

「椛、おめでとう!」

麻奈美の祝福の声が合図となって、会場がわあっと喜びの渦に包まれる。

「え? あ……」

そうだった、ここは雅苑のバンケットだった……。

恥ずかしさから真っ赤になって俯く私の肩を、蒼甫が優しく包みこむ。



< 284 / 285 >

この作品をシェア

pagetop