極上御曹司のイジワルな溺愛

何がどうして、こういうことになった?

副社長の胸に抱かれながら考えてみても、色恋沙汰から遠ざかっていた私には到底理解できない。

昨今は先輩後輩関係があれば、恋愛感情がなくても抱きしめていいっていう法律でもできたとか?

いや、それはダメでしょう。相手も気持ちも考えないで抱きしめちゃうとか、犯罪行為に値する。

それなのに私の体ときたら、副社長が相手だということを忘れて全身を熱くしてしまうから手に負えない。

「こ、これは、どういうことでしょう?」

「腕を掴んでいるだけじゃ心もとないから、抱きしめたまで。深い意味はない」

あ、そうか。深い意味がなくても、こうやって抱きしめていいんだ……って、そんなわけないでしょ!!

「さっきは悪かった」

「え? さっき?」

頭上から落ちてきた言葉に、何のこと?と首をかしげる。

「風呂。まさか椛がいるとは思わなくて」

「あぁ……そのことですか」

忘れていたことを言われ、風呂場での情事が鮮明に蘇る。

「も、もういいです。忘れてください」

恥ずかしい……。

そんなことより、今は副社長の腕に抱かれている方が問題で。

いや、嫁入り前の娘が彼氏でもない人に全裸を見られてしまったことも、問題があると言えば問題なんだけれど。



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