極上御曹司のイジワルな溺愛
「な、何も、企んでなんかいませんけどぉ」
作り笑顔が引きつって、声が上ずってしまった。
蒼甫先輩の顔を見れば、眉間にシワを寄せ疑うような目つきをしている。
「まあいい。すぐに車を出してくるから、門の前で待ってろ。いいか、もう一度いう。逃げるなよ」
そう言いながら蒼甫先輩がピシッと私に指差すと、食器を片手にキッチンへと消えていく。
蒼甫先輩……その笑顔、むちゃくちゃ怖いんですけど。
気は進まないが、こうなった以上蒼甫先輩に従うしかない。
憂鬱な溜息をつきながら、足取りも重く二階へと向かった。
アンティーク調のドレッサーに座り、なんだかこのところ思い通りにいかないなと、今日何度目かの溜息をつく。
「ホントに勝手なんだから……」
蒼甫先輩は、私の事を何だと思ってるんだろう。
かわいそうな後輩の面倒を見るいい先輩を演じているのなら、いい迷惑だというもの。
そりゃね、私は二十九にもなってなんにもできないけど。その挙句の果てに栄養失調や貧血で気を失って、みんなに迷惑かけてばかりだけど。