極上御曹司のイジワルな溺愛
「椛、ゴミ袋!」
「はい!」
引き出しから燃えるゴミの袋を取り出し、蒼甫先輩に手渡す。
私はと言えば、散らかっているお菓子の袋や紙ゴミをテキパキと片付けていく先輩の姿に、ぽかんと口を開けるばかり。
なんて手際がいいの──
母も掃除好きで手際はいいが、蒼甫先輩はその上をいっている。燃えるゴミ燃えないゴミ、資源ごみにプラゴミ。それらを一瞬で見極め分けていくさまは、ゴミ仕分けのおじさんたちをも凌ぐ速さだ。
「何ボーッと見てる。椛は服をスーツケースに詰めろ。それが終わったら、その辺にある細かい雑貨をダンボールに入れておけ」
「は、はい。先輩!」
この光景、昔イベントサークルで──
大学の文化祭の準備をしていたときリーダーだった蒼甫先輩は、今みたいに細かく指示を出しサークル全体をひとりでまとめていた。
その指示が的確だから企画は順調に進み、文化祭の当日も大盛況。サークル部門で表彰台に上がって、みんなで大喜びをしたのを昨日ことのように覚えている。