極上御曹司のイジワルな溺愛
蒼甫先輩の車でたどり着いたのは、三年ほど前にオープンした郊外の大型複合施設。そこに入っているセレクトショップが好きな私は、今持っているスーツのほとんどをその店で買っている。
「始めてきたけど、かなり広いんだな」
蒼甫先輩が吹き抜けになっている天井を見上げ、そうつぶやく。
地上五階建ての建物の中には二百近くの店舗が入っていて、シネコンも入っているからか平日でもいつも混雑していた。
もう何度も来ている私は慣れたもので、エスカレーターで三階まで上がると蒼甫先輩がいることも忘れ、脇見もせずに目的のセレクトショップまで進む。
店舗が近づくとディスプレイされた洋服が目の飛び込んできて、それだけでテンションが上がった。
「いつ来ても、素敵」
手に取りながらスーツを一点一点見ていると、蒼甫先輩が私の顔を覗き込む。
「なあ椛。俺がいること、忘れてない?」
突然、蒼甫先輩のどアップ。息がかかりそうな至近距離に、心臓が止まりそうになった。