極上御曹司のイジワルな溺愛
「……先輩っ!? わ、忘れてなんかないですよ!」
慌てふためく私に、蒼甫先輩は大笑い。
こういうときの先輩はタチが悪い。ホントはすっかり忘れてました……と言ってやろうかしら。でもそんなこと言ったら、私の立場が危うくなるからやめておく。
「あっち側に男性用があるんで、そっちで待っててください」
このセレクトショップは女性ものだけではなく、男性のスーツや洋服、ネクタイや小物も取り揃えられている。センスのいい商品が集められていて、落ち着いた大人な買い物客も多く見受けられた。
きっと蒼甫先輩も、気にいるものが見つかるはず。そう思って言ったのに……。
「なんで? お前のスーツを見に来たんだろ? 俺が選んでやるよ」
全く想定外の言葉が返ってきて、唖然としてしまう。
「そ、そんなのいいです。スーツぐらい自分で選べます」
でも蒼甫先輩は私の言葉に耳も貸さず、勝手にスーツを選び出した。
そんなつもりで蒼甫先輩をここに連れてきたわけじゃないのに、なんでそうなるわけ?
どうしていいかわからない私は、右往左往するばかり。
「何色がいいんだ?」
「黒かネイビーかグレー……ですか」
聞かれたからには、まあ素直に答える。