極上御曹司のイジワルな溺愛

「試着してみたらどうだ?」

蒼甫先輩に促され頷くと、試着ルームへと移動する。

すると、私に気づいた顔なじみの店員がすぐにやってきた。

「まあ、里中様。いらっしゃいませ」

「お邪魔してます」

ここに来るときは、いつもひとり。その方が気兼ねなく選べるし、時間を気にすることもない。ましてや男性と一緒に来るなんて、一度も考えたことがなかった。

それなのに今日は、蒼甫先輩が一緒。

店員さんの顔も、何やらニヤニヤしているように見えるのは私だけ?

「今日は、お一人じゃないんですね。素敵な男性」

そう耳打ちする店員の表情は、素敵な男性を目の前にした乙女の姿そのもの。ニヤニヤしているのは、どうやら蒼甫先輩がイケメンなのが原因らしい。

店員はチラッと上目遣いで蒼甫先輩を見ると、挨拶するかのように小さく頭を下げた。

「この方は、里中様の彼氏さんですか?」

いくら顔なじみとは言え、普通そこまで聞く? と思いながらも、違いますと言うだけのことかと諦める。でも私よりも先に、蒼甫先輩が口を開いた。



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