白銀の女神 紅の王(番外編)



「ほれ、シルバ。あとは侍女たちに任せてお前さんもはよう部屋を出た方がいい」


フェルトに悪気などなく、ただ単に風邪が蔓延するのを防ぎたいだけのこと。

もうシルバが行ってしまうと思ったら余計顔を上げたくなかった。

グッと枕を抱き込み、耳でシルバの行方を探っていると、シルバはベッドを離れるどころか、私の頭に手をあてる。




「俺はここにいる」

「ッ…!」


頭を撫でられながら呟かれたシルバの言葉に驚き、弾かれたように顔を上げる。

それがおかしかったのか、シルバは破顔して笑った。

シルバのツボは相変わらず分からない。

なぜかご機嫌なシルバは何を思ったのか突然私の額に口づけを落とす。





「お前はまだ寝ていろ」

「ちょっ…フェルトさんが見てる…」


二人きりならまだしも、他人に、しかもシルバの母親のような人の前で口づけされるのはとても恥ずかしい。

これにはフェルトも呆れたように溜息を吐いて、呆れたように口を開く。




「本当じゃ、久しぶりにお前さんの噂を聞いたかと思えば結婚したと言いおるし、顔を出したかと思えばこの変わりようで私しゃついていけんよ」

「いずれここにもくるつもりだった。そもそも婚儀に呼んだにも関わらず、こなかったのはそっちじゃないか」


自分の変容ぶりには触れずに答えたシルバは自分のことを棚に上げ、婚儀にこなかったフェルトが悪いと言わんばかりに返した。



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