白銀の女神 紅の王(番外編)
「熱はあるかもしれないけど…」
「あるかもしれないじゃなく、あるんだ」
ぴしゃりと言われた言葉に少し悲しくなった。
シルバは事実を言っただけなのにそんな感情を抱くなんて間違っているのかもしれないけど、またこの部屋に閉じこめられると思うと寂しかった。
それに…シルバはもう平気なのかな。
ひと晩一緒に過ごしただけでもう十分?
私はまだ足りない…もっとシルバと一緒にいたいの。
鼻の奥がツンとなり、じわりとこみ上げた熱いものを抑えながら温かな手をやんわりと離す。
訝しげなシルバの視線から逃げるようにして一歩引いた。
「起きていられないほどじゃないし、私掃除をしなきゃ」
そのまま後ろに下がり、床に足をつける。
しかし、立ち上がった瞬間、グラリと視界が揺れた。
目の前がチカチカとフラッシュし、酩酊するように体が揺れる。
崩れ落ちそうな体を何とか保ってると、ベッドの上に座っていたシルバが私の腕を掴み、あっと言う間にベッドに引き戻された。
力の入らない体はシルバのなすがままに仰向けに寝かされ、ベッドに深く沈んだ。
「こんな状態で動けるわけがないだろ」
あぁ、やっぱりシルバには見破られてしまう。
「分かりました。治るまでここにいます…」
そう言って近くにあった枕を抱き寄せて顔を埋める。
顔を隠していなければ涙が溢れそうだった。