白銀の女神 紅の王(番外編)


「心配なのは分かりますが、サウス地区は他の地区に比べれば安全です。エレナさんもシルバに迷惑をかけたくないと思ってサウス地区を選んだのでしょうね」


確かにサウス地区は貴族が多く住む土地であり、治安維持が保たれている土地だ。

アイザックスの政権下時代も地元貴族の結託によりその土地に住む一般市民を守っていたという。

しかし、いくら治安が良いといってもエレナはあの容姿故に目立つ。




「護衛は十分つけているんだろうな」

「抜かりはありません。皆、一般市民を装っていますし、端から見れば旅の一行にしか見えないでしょう。何かあれば報告するように伝えていますし、サウス地区に入ったら伝令を入れるようにもしています」


旅の一行か…あの容姿を隠すことが出来るなら上手く装えるかもしれないな。




「まさか行く気じゃありませんよね?」

「行けるわけがないだろう」


爽やかさを越えて嫌みすら感じるウィルの笑顔にため息を吐く。




「シルバにしては賢明な判断ですね。エレナさんはともかく、貴方は公務が立て続けに入っていますし、明日はノース地区の土地開拓のために視察と会議に行くんでしょう?」

「あぁ」


ウィルの言葉に眉をピクリと動かし、短く応える。



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