白銀の女神 紅の王(番外編)
「エレナお姉ちゃん、あったよー」
「僕も!」
数十メートルほど離れた先から嬉しそうな声が聞こえ、顔を上げれば、傷に良く効くという薬草を高々と掲げているアベルとココットがいた。
二人とも薬草を採るのに夢中だったのか、着ている服も薬草を持っている手も泥だらけだ。
はしゃぎながら走ってきた二人の手から薬草を受け取ると、それは確かに探していた薬草だった。
「二人ともすごいわね、見つけるのが上手だわ」
「本当だ。一見そこら辺の草と同じように見えるのによく見つけられるな」
私とブルームが褒めると、二人はほんのり頬を赤くして照れながら笑った。
そしてその薬草を私の持っていた籠に大事そうに入れる。
「よし、これで全部だ」
ブルームが持っていたフェルトから渡されていたリストを見ると、いつの間にか全て採り終えていた。
ブルームはやっとだといわんばかりに溜息を吐き、達成感を味わうように体を伸ばした。
「雲行きも怪しくなってきたし、帰るか」
アベルとココット、私はブルームの提案に賛成し、森を出た。