白銀の女神 紅の王(番外編)
舗装された沿道に出た頃にはポツポツと雨粒が空から降り始めていた。
アベルとココットは大きな葉を雨よけ代わりにしてはしゃぎながら走って行く。
楽しそうな二人を見ていると、自然と笑顔になっていて、愛おしさが込み上げる。
そして思うのだ、シルバの子供が欲しいと。
多分これは一時的なもので、お城に帰れば膨れ上がったこの気持ちも治まってくれると思う。
結婚しているのに気持ちを抑える必要なんてないんだろうけど、私たちの場合は“特殊”だから。
シルバはどう思っているのか分からないけど、国王たるもの世継ぎを残すことが使命のひとつ。
いずれシルバが子供を欲してくれる日が来るのだろうか。
願望にも似た淡い想いに胸がツキンと痛む。
私はただ、そんな日がくればいいなと思いながら待つしかない。
そんなことを思いながら歩いていると、横を歩いていたブルームが前方を見て口を開く。
「まずいな…」
不穏なその言葉に一気に現実に引き戻され、弾かれたように顔を上げた。
ブルームの視線の先には男三人に囲まれた女性がいた。
「ノーラさん?」
ブロンドの髪も若草色のワンピースもありふれた色だけど、遠目から見ても彼女だと分かった。