白銀の女神 紅の王(番外編)
どうやってエレナを連れて帰ろうかと考えていた時、ふと手に何かが触れる。
視線を右手に移せば、白く細長いエレナの指先が俺の手に触れていた。
遠慮がちに触れてきた手はやはり冷たく、僅かに震えている。
それが寒さからくる震えなのか、怯えからくる震えなのかは分からない。
エレナは俺の指先にそっと触れ、触れても大丈夫だと分かったのか、指先だけに触れていた手を俺の手のひらに滑らせた。
キュッと手を握り返すと、視線を持ち上げ、俺の目をすがるような瞳で見るエレナ。
潤んだ瞳は意図したものではないが、その表情に思わず心臓が小さく跳ねる。
感情のままに手を引きたい衝動に駆られたが、グッと抑えた。
「怖いか?」
一言そう聞くと、エレナは潤んだ目を見開き、込み上げた感情を抑え込むように口を結んで首を横に振る。
そして、ゆっくりと近づき、その細い腕が俺の首に伸ばされた。
そのまま体を寄せてきたエレナからふわりと香った甘い香りに安堵し、張りつめていた息を吐き出す。
冷えていたのは手だけではなく、雨を吸い込んだ服に包まれたエレナの体も冷え切っていた。
その細い体に腕を回し、腕の中の存在を確かめる様に抱きしめた。
暫くその状態で抱きしめていると、背後から複数の馬の足音が近づくのが聞こえた。