白銀の女神 紅の王(番外編)


やはり国民の関心ごとは世継ぎのことなのだろうか。

とりわけこのアークでは先代、先々代の国王に血の繋がりはなく、内乱によって国王の座についてきたという過去がある。

王族が子をもうけ、その子供が次の王政を継いでいき、平和な国を築いていくことこそが国民の希望なのだろう。

例え国民が望まなくとも、王族は全うするだけの義務がある。

それほどに国にとって世継ぎとは大切なものなのだ。

そして、この問題を再認識する度に取り留めのない不安にかられてシルバにまで心配をかけていた。

シルバの目には私が子を成すことを拒絶していたように映っていただろう。

シルバは何も言っていなかったけれど、誓いを立て夫婦になって半年、子を成していないことが全ての答えかもしれない。





「フェルトさん…私は本当にシルバの妃にふさわしいのでしょうか」

「それは分からん。じゃが少なくともわしはお前さんをこの国の妃にふさわしいと思っておる。お前さんは容姿は人と違えど、心は強い。そうでなければ悪漢を前に立ちはだかることなどできん」

「あれは私とあの子たちが重なったからで…」


続く言葉をフェルトは手をかざして制した。




「理由はどうあれ、あの状況で一歩踏み出すことができる者とできぬ者では大きな差がある。民のために一歩踏み出すことのできたお前さんは間違いなく国王の妃としての気質をもっとるよ」


フェルトは難しい顔をした私にニコリと笑った。




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