白銀の女神 紅の王(番外編)
「年寄りのほめ言葉は受け取っとくもんじゃ」
「はい…ありがとうございます」
反論しかけたものの、それを飲み込み、素直に受け取った。
自分ではまだまだ妃として胸をはれないと思っているけれど、こうして第三者から認められると少し自信を持てた。
どこまでも現金な自分の心に苦笑していると、フェルトは申し訳なさそうに口を開く。
「この6日間お前さんに冷たい態度をとってすまなかったな」
「いいえ、我が子のように思っている人のパートナーを見極めたいと思うのは当然ですから。少し心が折れそうでしたけど」
茶目っ気たっぷりにそういうと、フェルトは目を丸くした後、腹を抱えて笑った。
「ほんにその子が相手でなかったらうちのせがれの嫁さんにもらいたいほどじゃ」
フェルトに息子さんがいたのだろうか、と思っているとフェルトは不意に視線をシルバに向けて口を開いた。
「良いかの?シルバ」
「いいわけがないだろう」
軽快なフェルトの声に帰ってきた不機嫌な声。
「シルバ!?起きていたの?」
後ろで横になっていたシルバを振り返ると、シルバは「あぁ」と短く答えて体を起こす。
着崩れた長衣からのぞく厚い胸板や、漆黒の髪からのぞく紅の瞳にドキッと胸が高鳴る。
体を起こして小さく欠伸をする姿すら目を奪われ、こんなにも近くに存在を感じられることに胸がキュッと締め付けられた。