片翼を失った少女~壊れていく願い~
 しばらくの間、動くことができず固まっているとレーンが隣に来て、食事を口にした。
 驚いて目を見開いていると、彼はにっこりと笑った。

「何も起こらないでしょ?」
「うん・・・・・・」

 苦しんだりしていない。
 本当に何も入っていないと思っていいみたい。
 それでも完全に恐怖心が消えたのではないので、恐る恐る一口食べてみた。

「・・・・・・美味しい」
「良かった。たくさんあるからいっぱい食べて」

 よほどお腹が空いていたのか、いつも食べる分より少し多く食べた。

「じゃあ、部屋に戻ろうか」

 行きと同じように帰りも手を引かれていった。
 部屋に着いて、私はレーンに一つ質問をすることにした。

「ねぇ・・・・・・」
「何?」

 彼は視線が合うように少し背を屈めた。

「どうやって私を連れてきたの?」
「簡単だよ。ルナを人気のないところへ連れて行って、眠らせただけ」

 あまりにもさらりと言うので、身震いがした。
 ここから早く抜け出したい。
 けれど、家に帰りたいわけではない。帰る家はとっくの昔に失った。
 自分には一人姉がいる。
 姉は自分勝手な性格のため、異性と交際をしても絶対に長続きすることはなかった。
 中には自分のことを気に入って、優しくしてくれる人がいた。それを見て、姉は怒り狂い、時には暴力を振るわれることもあった。
 両親は見て見ぬフリを貫き続けた。どちらも助けようとしてくれなかった。
 あそこは自分のの居場所じゃない。居続けたらもっと傷つく。
 こうして私がいなくなっても、捜すどころか、きっと喜んでいるだろう。
 部屋の窓の外を見てみると、星が見えた。

「綺麗・・・・・・」
「本当だね。今日はよく見える」

 願いはあるけど、流れ星に願わない。自分で叶えたい。
 一刻も早くここを出ること。
 今はそれだけだった。
 次の日の朝、館の中を案内してほしいと頼んだ。

「ここでじっとしてたら、時間がもったいないもの」

 レーンは喜んで引き受けてくれた。
 館を一通り案内してもらった。
 もちろんこれは退屈を紛らわすためではない。どこへ行けば脱出できるか調べるためだ。
 
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