鏡の国のソナタ
「素奈多……」

クランは、ゆらりと立ち上がった。

「だけど、あたし、クランが好きだから……。

とっても大事だから……。

先輩に似てるからじゃなくて、クランは、クランだから……。

他のだれでもない、たったひとりだから……。

でも、あたしにはどうすることも出来ない。

わがまま通すには、こうするしか……!」


素奈多はぎゅっと目を閉じると、息を詰めて両手で握ったメスを左の首筋に突き立てた。

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