鏡の国のソナタ
プルプルと足が震えて力が入らない。

肘掛けから手を離すことができなかった。

そこで、場所を移動して、今度はベンチの背を支えにして立ち上がろうとがんばった。


「がんばれ、もうちょっとだ」


突然、声をかけられて、素奈多は驚いた。

声の主が九嵐だったからだ。

九嵐の声に力を得たのかどうか、素奈多は弾みをつけてぐいっと立ち上がった。

が、足がその場に吸い付いたように動かず、バランスが取れない。

前につんのめって倒れそうになった。

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