鏡の国のソナタ
パリパリパリ……。

奇妙な音は、なおもクローゼットの中から聞こえている。

「ううっ……」

自分の部屋の中のことだ。

このまま放ったらかして寝るわけにはいかない。

素奈多は涙目になりながら、クローゼットの取っ手にかけた手を引き上げた。


「うきゃぁぁぁぁぁ!」


なにも見ていないうちから、悲鳴が出た。

素奈多は後ろにふっとんでシリモチをつき、あうあう言いながらクローゼットの中を凝視した。

去年の秋に買ったロング丈のコートの裾が揺れている。

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