requiem
麗香はいつもの教室に向かった。
「麗香、遅えよ」隼人はそうやって暴言をはくけど、笑ってるから怒ってるんじゃないって分かる。「ごめんね。」「麗香さんじゃん。こんちわー。」彼の周りの人達がいっせいに私を見る。私はニコッと笑ってみせる。相変わらず龍也はそっぽを向きながら座っているけど…。
「あのさ、麗香。悪いけど5万貸してくんない?」「え…また?」最近彼はよく私にお金を借りるようになった。これで三回目…。私が怪訝な顔をするとふわっと抱きしめられた。タバコの匂いと混ざった大好きな香りに包まれる。「麗香…大好きだよ。お願い…困ってるんだ。」
切なそうな目で見つめられると逆らえない。「貸してくれないと…俺ら別れなきゃだめになるかも…。」「いやだ。別れたくない…。わかった。明日持ってくる。」「ありがと。麗香。大好き。」彼が抱きしめてくれるなら…5万くらい…。
「ごめん。今日病院あるから…もう行って良い?」「あぁ、呼び出してごめんな。頼んだよ。」笑顔で手を降る彼に手を振り返すと…ふと、龍也と目があった…気がする。でも龍也はすぐにまた、私から視線を外した。
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