銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしの体を抱くモネグロスの腕に、痛いほど強く力が込められる。

「おぉ……神の船よ……」

 モネグロスの体が小刻みに震えて、彼の歯がギリギリと音を立てた。

 すすり泣く呼吸の音と、胸の震えが伝わってくる。

 モネグロスが抱きかかえられながら、あたしは、息をする事もできなかった。

 瞬きする事も、できなかった。

 なにも、できなかった。

 なにも、なにも。


 なにも。


 ……この力は、何のため?

 この、水の力は、いったい何のために?

 あの水の精霊が、自分の命の終焉に、あたしに託した力。

 あたしの道行く先の希望を信じて、託した力。

『守って下さい。仲間を……そして世界を』

 見開いたあたしの両目が、火の精霊の姿を捉える。

 真っ赤に染まった両目からも、口からも、煙のように怒りの炎が燃え上がる。

(……あんた……)

 忘却の果ての、その姿。

(……あんたは……)

 全ての有を、無と化すほどの、閃光と炎の空間の中で。

(あんたは……!)

 ただ、猛り狂うだけの……

 もの。

「あんた! いま自分が何をしたか分かってるの!?」
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