銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 さすがに罪悪感に駆られて、あたしは緊張する。

 でも火の精霊はそんなあたしに目もくれず、土の精霊に話しかけた。

「無事に再生したか?」

「はい。もんだいはありません」

「済まない。謝罪する。燃え上がれば、止めるは不可能。それは分かっていたが、長の命令が……」

「わかります。命令にさからえば、他のすべての火の精霊達のたちばが悪くなってしまいます」

「……」

「でもあなたは、ちゃんと再生の炎をつかってくれましたから」

「しかし……」

 火の精霊が神の船を見た。

 黒く焼け焦げた木片の残骸は、さすがに再生の炎も元通りにはできないんだろう。

 土の精霊が何も言わずに、自分の兄弟のなれの果ての姿を見つめている。

 その沈黙が、逆に土の精霊の悲しい心を雄弁に語っていた。

 でも小さな彼女は軽く首を振り、火の精霊をしっかりと見上げた。

「いずれ神の船を苗床に、木々の若芽もうまれます。ながい時間をかけて、いつか大木になります。そのときにきっと、兄弟の名乗りができます」

「土の精霊よ……」

「その日がくるのを、わたしは、たのしみに待ちますから」

 土の精霊と火の精霊は、お互いをじっと見つめ合った。

「土の精霊よ。お前に再び、心からの謝罪と感謝を捧げる」

「火の精霊、ありがとうございます」
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