銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「あるんだよ」

「なんで?」

「狂王が、精霊を見下しているからさ」

 ジンが不機嫌そうな表情で吐き捨てた。

「だから実際、城内のほとんどの場所は、人間しか入り込めない」

 うーん、そうか。つまり狂王は、特権意識があるのね。

 人間が一番優れていて、他は下等生物。

 だから精霊たちを、自分たちの便利な生活のために利用はしても、側には決して近づけようとしない。

 まさに奴隷扱いね。ひどい話だわ、まったく!

「あれ? でも実体化を解けば、人間に気付かれずに入り込めるんじゃないのかしら?」

「入り込むのは可能だ。ただ、すぐ気付かれちまうんだよ」

「なんで?」

「精霊の長が、監視を強めているからな」

「長が? なんでよ?」

「長は、いまではすっかり王のいいなりなんです」

 土の精霊が悲しそうな表情で、うな垂れた。

「長は、わたしたち精霊を決して城内へは入れようとしないんです。王がそれを、のぞんでいますから」

「ああ、オレもアグアを探しに城に忍び込んだが、長に見つかって放り出されたんだ」

「わたしは、城の入り口あたりで気配をさがしました。でも遠すぎて……」

「だから、城の奥まで入り込まないと見つけ出せないと思う。そこで雫の出番なんだよ」

「あたし?」

「お前は人間だ。城に入れる」

「そりゃ、あたしは人間だけど……」

 でもお城よ? お城。

 平民がノックしたって、簡単に玄関開けてくれると思えないけど?
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