銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしの立場が不確定なままなら、そう簡単には処刑できない。

 処刑する事が、王を不利にする事態を招かないとは断言できないもの。

 この大事な時期に危険な橋は渡りたくないはず。きっと怖くてヘタな真似はできないわ。

 だからノームも処刑できない。いざという時に、あたしを思い通りにする為の切り札だもの。

 ……よーしよし! なんとか運が向いてきたわ!

 この状況を最大限に利用して、反撃の機会をうかがうのよ!

 ジン! どうか待っていて! あたしは絶対に諦めないわ!

 アグアさんの居場所を手土産に、きっと無事に帰るから!

 ……って思考を読まれないように、しらじらしく困った表情で視線を逸らした。

 ヴァニスは考え込むように、あたしを頭のてっぺんから足の爪先まで見ている。

 いくら凝視されても、答えられないものは答えられません~。

「ふむ」

 おもむろにヴァニスが玉座から立ち上がって、あたしは思わずビクッとする。

 な、なによ!? 何か不満でもあるって言うの!?

 ……あるだろうけど。

 ビクつきながら見るヴァニスの姿は、漆黒の衣装の胸元や肩口に、手の込んだ立体的な金糸の刺繍が施されている。

 生地の美しい光沢からして、その品質の良さは疑うべくも無いけれど、全体的にかなり質素な雰囲気。

 黒髪に黒の衣装のせいかもしれないけど、華やかさはまったく感じない。貴族達の衣装のほうがよほど贅沢なくらいだ。

「来い」

「え?」

「今から余について来い」
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