銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ずらあ~っ!は、どこまでもどこまでも続いている。

 いったいどこから出てきたのよ、この大人数。マラソンの街頭応援みたい。

 ほとほと呆れていると、進行方向に両開きの分厚い扉が開かれているのが見えてきて、そこから外の景色が窺える。

 どうやらヴァニスは外出するつもりらしく、扉へ向かって真っ直ぐ歩いていく。

 彼と一緒に外へ出ると、頭上にはスッキリ晴れた綺麗な青空が広がっていて、思わずホッとしてしまった。

 あぁ、いつの間にかもう夜が明けていたのね。

 半地下の暗い牢屋の中じゃ感覚が狂ってしまって、時間の経過が良く分からなかったから。

「あれに乗るぞ」

 空の青さと木々の緑に和んでいると、ヴァニスがそう言って前方を指差した。

 城門の側に横付けされている、その乗り物を見たあたしの目が、キョトンと丸くなる。

 ……あれって……。

「なに?」

「馬車だ」

「馬、車?」

「馬車を知らぬのか? 馬車とは人を運ぶための、馬を利用した乗り物の事なのだ」

 したり顔で説明するヴァニスに向かって、あたしは手と顔を横に振った。

 いや、違うのよ。そうじゃないの。

 馬車くらいは知ってるのよ。あたしも。

 そうじゃなくて。車の方じゃなくて。

「あの生き物、なに?」

「だから、あれが馬だ」

「う……??」

 うま? あれが、馬?
< 211 / 618 >

この作品をシェア

pagetop