銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしは馬車に向かってゆっくり歩き出した。

 不安や疑問があったところで、ヴァニスと共に城へ戻る以外には選択の余地は無い。

 城にはノームも、アグアさんも幽閉されている。

 このまま放置はできないわ。何とかしなきゃならない。

 ここはおとなしく言う通りにしよう。

 自分に向かって剣を突きつけた男と隣同士、肩を並べて席に着く。

 心は鉛のように重苦しかった。相変わらず妖怪馬はこっちをガン見してるし。

 しつこいのよ、あんたらはもうっ。

 御者がパンッとたずなを鳴らして、馬車は元来た道を城へ向かってひた走る。

 あたしは首をひねって、後ろを振り返った。

 三本の白い石柱。草原の中に佇む不可思議な存在。

 始祖の神の降り立ったこの場所で、ヴァニスは何をするつもりだったのかしら。

 なぜあの時に石柱が振動したのだろう。あたしに対して反応したの?

 なら、どうして急に収まってしまったのかしら?

 お陰であたしは助かったけれど。

 あの振動には何の意味があったんだろう。

 ヴァニスは、何を望んでいたんだろうか。

 疑問だらけの頭を抱え、遠ざかっていく石柱を眺め続ける。

 奥歯に物がはさまったような気持ち悪さと、揺れる馬車の不快さ。

 それらが混じり合って、落ち着かない不安感がもくもくと膨れ上がっていく。

 ここには、何かがある。


あたしは首が痛くなるまで、小さくなっていく石柱を見続けていた。


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