銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
―― サアァァァ……

 穏やかな音と共に、静かな夕立のような優しい雨が、細い糸のようにキラキラと輝きながら降ってくる。

 あたしは、砂漠の砂のような雨を両手で受け止めながら、じっと眺めた。

 雨足も全然強くない、どちらかといえば頼りなげな雨。

 でも心の中にまで染み入るような、そんな素敵な安らぎを与えてくれる雨。

 ……うん、これは紛れも無くモネグロスの雨だわ。

 こんなにか細い雨なのに、見る間に周囲の炎の勢いは弱まった。

 兵士達を燃やしていた火もあっという間に消えていって、みんな我に返ったように、キョロキョロとお互いの顔を見合わせている。

「あ……?」

 イフリートも雨の中で我に返ったようで、自分の体を濡らす雨を見ている。

「イ、イフリート! わたしが分かりますか!?」

「おお、ノーム! 無事で良かった!」

 イフリートが駆け寄ってきてノームに手を伸ばす。

 ノームがピョンッとその手の中に飛び込み、愛しげに指に頬擦りした。

「またお前に怖い思いをさせた。謝罪する」

「いいえ。それより雨にぬれたりしても大丈夫ですか!?」

「大丈夫。この雨はとても……とても、良い雨なり」

 良い雨。その例え方にあたしは思わず微笑んだ。

 まさしくその通りだわ。モネグロスの内面そのものを現わすような雨だもの。

「雫、大丈夫だったか!?」

 ジンの声にあたしは笑顔で振り返り……

 そのまま、顔を強張らせた。
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