銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「そんな! ヴァニス―――!」

 ヴァニスの呼吸は完全に乱れて、両肩も胸も激しく上下し、大きく開いた口から懸命に酸素を取り込もうとしている。

 でも、それがほとんど用を成していないのは明らかだった。

 汗はダラダラと滝のように流れ、皮膚は青白く、とても血の通っている人間の肌の色とは思えない。

 震えるヴァニスの肩から、これ見よがしに杖が抜かれ、また勢い良く鮮血が溢れ出した。

「……!!」

 驚愕の表情のまま、ヴァニスの体は前のめりに倒れる。

 彼はドサリと地面に突っ伏して、そのまま動かなくなってしまった。

「ヴァニス! ヴァニス! ヴァニス――! しっかりしてヴァニス! 死なないでヴァニス!」

 あたしは、ひたすらヴァニスの名を泣き叫んだ。

 でもあたしの願いも、叫びも虚しく、杖が……

 杖の数が、また、増えていく。

 ヴァニスが杖から逃れようと必死にもがく間に、杖はヴァニスの体の周囲をグルリと取り囲んだ。

 そして、その切っ先を獲物に狙い定める。

 いやあぁぁぁ! やめてえぇぇ―――――!

「そして、これがふたつ目」

 番人の無情な声を合図のように……

 全ての杖の切っ先が、ヴァニスの全身に音を立てて突き刺さった。
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