銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしは半狂乱で叫び続ける。

 そして番人は、どこまでも幸福に満ち足りていた。

 いつも無表情だった顔は今、まさに幸福と喜びに満ちている。

 そして……不意にその表情が歪んだ。

「やっと……」

 その目から、信じられないモノが零れる。

 ……涙、だった。

「やっと……やっと……」

 赤ん坊のように顔をクシャクシャにして、番人は泣く。

「これでやっと……死ねる……」

 枯れ木のように衰えた老人が、わあわあと泣いていた。

 涙が次々と皺だらけの顔を伝って落ちる。

 番人は……死にたかったんだ。

 始祖の神の復活よりも、ただ、自分の命をもう終わらせたかった。

 永劫の命も、孤独も、使命も、なにもかもが……自分にとってもう無意味でしかなかったから。

 番人の泣き声が突然止んで、いままで動いていた秒針がいきなり止まるように、コトリとも音がしなくなった。

 そして番人は……

 絶命した。


 彼は、真実望み続けたものを手に入れた。

 世界の破滅を、代償にして。


―― ドシュゥッ!!

 閃光が走り、三本の石柱から眩い光が天に向かって走る。

 あたしはカラッポの頭と心で、ただ、それを眺めていた。

 完全に無気力に、その光景を受け入れていた。

 だってそれしか、もう。

 あたしに残された道は無かったから。
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