銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「船さん! 船さんお願い起きて!」

 手の平が腫れそうになるくらい、必死で床を叩く間にも、番人の砕けた部分はあっという間に再生していく。

 死ぬほど焦ったあたしは、声を限りに叫んだ。

「あの向こうに、人間の国にアグアさんがいるのよ!!」

―― ボウッ……!

 その叫び声に反応するかのように、船体が強く光った。

 ユラユラと大きく身震いしたかと思うと、高速船も真っ青なスピードで、球体に向かって突進し始める。

 す、すごい! アグアさん効果抜群!

 後ろを振り返ると、ほぼ再生を終えた番人が立ち上がりかけていた。

 どうしよう! 間に合わない!?

 立ち上がった番人のお腹のあたりが、中に巨大バルーンでも仕込んだように急激に膨らみ始めた。

 そして耳をつんざく破裂音。番人の全身が、跡形も無く爆風で吹き飛ばされていく。

『今だ! 走れ! 飛べ!』

 ジンの声と共に、後ろからの台風のような追い風が迫ってきた。

 それに乗った神の船は、まさに飛ぶように走る。

 砂地がまた小山のようにみるみる盛り上がって、番人の体を形成しながら、船を上回るようなスピードで追いかけてきた。

 うわあぁ! まだ諦めてないの!?
< 90 / 618 >

この作品をシェア

pagetop