蒼い時
「田中君、これやり直し!明らかに数字違ってるじゃん。頼むからさ、ちゃんとしてよ」


「すいません、部長。直ぐにやり直します」


「出かけるからね、メール入れて。他の見積もりも一緒にね」


少しキツい話し方だったなと、後悔しながらも、慌ててオフィスを飛び出した。


自社ビルの前で、黒塗りのセダンに先に乗り込んでいた社長が目に入る。


「すいません!社長。急だったんでバタバタしてました」


「良いさ、俺が急に呼んだんだからさ。お前、又、怒鳴ってたろ」


笑いながら、そう話しかけて来る。それでも、手元の資料から目を離さない。


暫く目を通すと、ポンと資料を一式私の膝に投げて寄こす。


「どう思う、それ?」
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